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〜 Silhouette & Detail of 1930's
Vintage
Suit 〜
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1930年代当時の紳士服には、現代においてあまり見かけることのなくなった特徴やディティール・仕様があり、全体のシルエットも現代のスーツとは趣を異にしていた。ここでは当時のヴィンテージのスーツを見ながら、その特徴的なシルエットやディティールを辿ってみたい。
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画像は1930年代当時のヴィンテージのスーツ。シルエットは昔ながらのブリテイッシュ・スタイルの王道を行く、ドレープ感溢れるシルエット。全体的に見ると上着はタイトめで、対してトラウザーズは現代のものに比べてゆったりとしているのが大きな特徴である。上着のタイトなラインからトラウザーズへのゆったりとした流れが、現代のスーツにはない独特でエレガントな雰囲気を醸し出している。 |
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ジャケットはウエストがシェイプし、胸を強調したシルエットになっている。後ろからのシルエットでも、胸からウエストにかけてのシェイプしたラインが判る。ベントは当時はノーベントが主流だったようである。ジャケットのタイプによってはベント入りのものも存在していたようであるが、ベントが入っていない方がよりクラシックな印象に見える。元々この「ドレープ」ラインを備えた紳士服は、「背広」の語源になったと言われる一説もある、イギリスはロンドンのサヴィル・ロウという高級仕立服店の通りにあった「Schorte(=ショルテ)」という一軒の仕立服店が、当時の近衛将校の制服が腰の部分で絞られていて美しく見えることに着目し、これを紳士服のシルエットに取り入れたのが始まりだったといわれている。 |
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胸からウエストにかけてシェイプしたライン。
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ラペルは現代のものに比べると幅が太めとなっている。
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ラペルのパターンはノッチドラペルと、ここで紹介しているピークドラペルと両方見受けられるが、ノッチドラペルは主にシングルブレステッドのジャケットで、ピークドラペルはシングル及びダブルブレステッドのジャケットで使用されるディティールである。また、肩の袖付部分は少しだけ盛り上がったセミロープド・ショルダーの仕様になっている。
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ちなみにこのスーツでは施されていないが、当時のスーツでしばしば見かける仕様をひとつ紹介しておきたい。それは「拝み合わせ」という仕様である。三ッ釦のものでは真中の、二ッ釦では上の釦に施す仕様で、通常釦の付いている生地の裏地にも釦を付けるもので、裏地側に付けられた釦で留めるとまさしく前身頃同士が手を合わせて拝んでいるかのような印象になるものである。当時は右前身頃の方にもボタンホールを開け、そのボタンホール同士を二つの釦を糸でくぐったもので留める仕様のものも見受けられた。現代のスーツではこうした仕様はあまり、というか殆ど見かけない仕様である。
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ジャケットの下にはウエストコート(=ヴェスト)をあわせるのが正統なスタイルだった。もともと紳士服においてはウエストコートまでが人前で見せても許された装いであり、現代のようにシャツ姿で人前に臨むのは相手に失礼にあたるとされていた。釦の数は5個または6個が多く見受けられ、これは着手の身長やオーダーによって変えられていたもののようである。また当時はダブルブレストのウエストコートもしばしば見受けられた。
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トラウザーズは現代のパンツと違い股上が深いハイバック仕様で、ブレイシーズ(サスペンダー)で吊って穿くタイプのものが当時の主流であった。全体的には、現代のものよりも太めでゆったりとした印象となっている。
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フロントはツータックプリーツ。
このトラウザーズにはウエスト右側部分に
フラップ付きのティケットポケットが付いている。
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バックはハイバックの仕様で、二つのブレイシーズ用の釦が付き、センター部分にはV字仕様のスリットが入っている。このモデルには腰の部分にアジャスターが付けられている。当時のものにはアジャスターが両サイドに付けられたものや、全くアジャスターが付けられていないものなども見受けられた。
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ハイバック仕様の後姿。センター部分に向かって
山なりにせり上がっていく様がクラシックな雰囲気に溢れている。
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サイドからの画像でも、フロントからバックにかけて
せりあがっていく仕様が判る。 |
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以上、1930年代のクラシカルなスーツスタイルの特徴的なシルエットやディティールを辿ってみた。一見同じに見える紳士服もよく見ていくと現代とは随分違った趣をもつことが判る。ただし、当時は現代と違いビスポークが主流であったため、細部のディティールやシルエットはものによって当然違う場合もあり、ここに紹介のスーツはあくまでも当時の特徴的な仕様を備えたヴィンテージのスーツのひとつの事例に過ぎないことを付記しておく。
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