Dressing for Autumn & Winter

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"Slub Yarn Stripe Double Breasted Three-Piece Suit"





Draper's Bench のダブルブレステッドのスリーピーススーツ。Swingなイメージを彷彿させる一着。





このスーツは、「スラブ・ヤーン(Slub Yarn)」という、ところどころに雲状の節をもった糸で構成されたストライプ柄の生地を使用して作られたスーツ。明るめのベージュに白と薄いエンジ色の糸が配される事で、全体として何とも艶っぽい、耽美的な雰囲気を醸し出す。






生成りのロングポイントのシャツはDraper's Benchのもの。細身で40年代調の派手な柄が特徴的なクラバットはもう90年代のある年だったかと思うが、当時のPOLO Ralph Laurenが" Hollywood Collection "と銘打って展開していたもの。


このスーツはダブルブレステッドであるうえにスリーピース仕様という凝ったもの。現代ではスリーピースのスーツはシングルブレステッドが殆どで、ダブルのスリーピースはあまり見かけることはないが、30年代の映画や服飾本等にはダブルブレストのスリーピースという仕様をしばしば見かけた。Draper's Benchはこうした拘りぶりが徹底していた。


足元にあわせたコンビネーションのフルブローグ・シューズはEdward GreenのMalvernV。トゥのブローグ部分がムラのあるアンティーク調の仕上げをしており、大胆な柄にも関わらずエレガントな雰囲気を感じさせる。


このスーツに漂う独特の艶っぽさは、クラシックで端正な正統派英国調のニュアンスよりも、どちらかというと当時の都会的でモダンで粋なニュアンスを包含したような雰囲気を感じさせる。例えるなら、かつてシカゴやニューヨークの摩天楼を背景に世間を賑わしていたマフィアやギャング、あるいはちょっと洒落たバーの黒人ミュージシャン、危ない仕事も依頼とあらば引き受ける探偵・・。見方を変えるとそれほどに当時の彼らのスタイルが魅力的であったということであろう。左の画像はそんな当時のJazzトランペッター・Roy Eldridgeの1936年に撮られた写真。ストライプのダブルブレステッドのスーツを見事に着こなしている。狭いVゾーンに幅広のピークドラペル、きつめに絞られたウエストに太めのトラウザーズ。細長いVゾーンにナローなラペル、ゆるやかなウエストラインにピタピタのパンツ、という昨今のクラシコイタリアに代表されるスーツトレンドとは対極をいくスタイルである。今回のスーツは、こんなイメージが沸いてくるスーツなので、当然オンタイムではなく、週末の、それも思いっきりエンターテインメントな遊びに出掛けるときに装いたい。例えば青山のJazz Club "Blue Note"にお気に入りのアーティストのショーを楽しみにいくときや、お気に入りのフレンチの極上のディナーに舌鼓を打ちにいとき、など。夜の楽しいひとときを艶っぽく、エレガントに演出してくれるスーツといえよう。(画像出典/「Black Beauty, White Heat  A Pictorial History of Classic Jazz」 Frank Driggs & Harris Lewine著 DA CAPO刊)




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