Dressing for Spring & Summer

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"Single-Breasted Cotton-linen Jacket, Trousers
and Co-respondent Shoes,"





今回は、往年のコロニアルスタイルを意識してあわせてみた。コロニアル(=colonial)とは「植民地」という意味で、元々は第一次大戦後、英国を始めとしたヨーロッパが植民地としていたインドやアフリカ、東南アジアなどを指す言葉である。戦争が終わると当時の英国やヨーロッパの富裕階級の人々がバカンスで挙って訪れるようになり、そうした土地へ赴いたときのファッションがコロニアルスタイルと呼ばれるようになった。映画にもなっているアガサ・クリスティ原作の「ナイル殺人事件」や「地中海殺人事件」、「死海殺人事件」といった物語の中の事件が、こうした土地へのバカンスで居合わせた欧米からの富裕階級の人々の間で起こるという設定からも、このような旅行が当時において人々の憧れの対象であり、物語としても「楽園願望」の強かった当時の欧米人の大衆(=読者)を惹きつけやすい大きなファクターであったかということが窺い知ることができる。


コロニアルスタイルというとグルカ・ショーツやサファリ・ジャケット、サファリ・シャツといったアイテムが判りやすいアイテムとして挙げられるが、今回はよりドレッシーな雰囲気を意識してジャケット・スタイルの装いをしてみた。ジャケットは、トラウザーズと共布のセットで展開されていたDraper's Benchのもの。今回はあえてジャケット単体であわせている。素材は麻×綿の混合で、ざっくりとした手触りがとても夏らしい雰囲気のもの。ベースカラーは生成で、淡いモナコブルーのウインドウペーンがあしらわれている。ちなみにあわせたトラウザーズも触感の違う麻×綿のもので、ナチュラルカラーの無地のものをあわせている。


ジャケットは当時のサマー・リゾート・スタイルのジャケットの典型的なジャケット・スタイルを踏襲した仕様になっている。フロントはシングルブレステッド・三つ釦。ラペルはノッチド・ラペル。そしてポケットは胸ポケット、腰ポケットともにパッチポケットで、ダブル・インバーテッド・プリーツを入れるという拘りの仕様。更に腰ポケットには浅くマチをつけたベロウズ・ポケットで仕上げるという、かなり凝った仕様。


背中のピンチバックはウエストバンドが付けられ、両腕付根部分を直線で結ぶ一本のヨーク、
そしてこのヨークからウエストバンドへと二本のプリーツがたたまれている。


下の画像は1930年代のオールドマガジンに掲載されていた同様の仕様のジャケット。
インバーテッド・プリーツ付きのパッチポケット、
そして背中はノーベントのプリーテッドベルテッド仕様のこのジャケットは
"A good-looking sport coat" として紹介されている。


正面からのバストアップ画像。頭にはパナマハット。
シャツはスカイブルーのロングポイントカラーシャツをあわせ、
タイは、オリーブグリーンの無地のものをもってきた。
カラーにはカラーバー、タイを留めるタイスライダーもあわせてみた。
カラーバーは、紐が結われたかのような意匠がチャーミングな、1930年代のSWANK社製のもの。
タイスライダーはアールデコ調の幾何学柄の意匠が素敵なスティール製のヴィンテージ。


足元に合わせたコーレスポンデント・シューズは、Draper's Benchの別注による、英国Crockett&Jones社製のもの。当時ディレクターであった沖坂氏がこの靴を別注したのは、恐らく15年位前になるだろうか。顧客から希望を受け付けてミニマムロットに達したら英国C&J社に発注する、という少量別注だった。素材はカーフ×ヌバック。淡いブラウンとオフホワイトの色合わせは、かつての旧き良き20年代〜30年代の世界を想像させるかのような色合わせ。トゥの形やシェイプもあきらかに既製のものとは思えない、美しいもの。現在の靴ブームではなかった当時にこれだけのものを別注展開していたというのは、ただただ驚くばかりである。


往年のコロニアルスタイル。
こんな装いで避暑地のバカンスへ旅立ちたいものである。



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