Column 2.


 Pinch-Back Jacket ピンチバック・ジャケット







 Column第2回目の今回は、30年代スタイルのスーツやジャケットに頻繁に見られる、特徴的な仕様についてご紹介したいと思う。

 1930年代当時は現代に見られるスーツスタイルのベースがほぼ完成し、当時華開いたアール・デコの文化同様、紳士服飾の世界も一気に華開いた時代ともいえる。こうした背景の中、スーツやジャケットのスタイルにも当時ならではの試みがなされたりすることがあった。特に頻繁に見られたのが、ジャケットの背中にアクセントをつけ、変化をもたせる、ということでした。具体的にいうと背中部分につまみ襞や箱襞を設けたり、あるいは背中の両肩部分にプリーツを設けて腰の部分にベルトを付けたりするもので、こうした仕様を施したジャケットを「ピンチバックジャケット」、「ファンシーバックジャケット」、「バイスイングジャケット」、「サニングデールジャケット」等と呼び、当時大変流行した。

これは元々はゴルフやハンティングなどで着られるスポーツジャケットにおいて、より動き易さを意識した結果出来上がった仕様のようである。一説にはこの仕様は英国服の仕立技術を習得したドイツのテイラーが考案したという説もあるようで、「ドイツ背広」という名で呼ばれたりもしていた。この仕様はその機能性という意味もさることながら、背中越しの表情の豊かさという意味でもスポーツテイストを感じる興味深い仕様である。

当時の雑誌の広告やテイラーの見本帳にはこうした仕様の様々なイラストや写真があり、そのバリエーションの豊富さは如何にこの仕上げに人気があったかを物語っている。

下の画像は、そんなピンチバック仕様を施した1930年代スタイルのジャケット。
当時の仕様をリアルに再現している。




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