Room No.7


JET SET氏のミケーレ・サヴォイア氏仕立てによる
ビスポークスーツと採寸時の画像 ◆





2007年12月9日に開催したオフ会に参加のJET SET氏より、氏の仕立てたミケーレ・サヴォイア氏によるスーツをオーダーされた際の画像をいただだいたのでご紹介したい。


今回紹介のスーツは、オフ会時に着用されてきたもの。氏は長身の身体にサヴォイア氏のスーツがとてもお似合いの、独特の雰囲気の方。ゆったりとしたドレープ感のある一着は、とてもエレガントな雰囲気である。聞けば氏は、英国のHenry Poole、銀座壱番館等、錚々たる老舗の名店でのオーダー経験のある方。なるほどサヴォイア氏のスーツの着こなしも、とても小慣れた雰囲気で着こなされているあたり、レベルの高さを窺わせる。「最もティピカルな、Savoia Styleにしてくれ」という要望で細かい点は全てサヴォイア氏にお任せしたというオーダーのスタンスも、それぞれのテーラーの「Style」をリスペクトする氏の姿勢が窺われる。ジャケットの前裾をスクエアに、そしてトラウザーズの裾をややすぼませたベグトップ風に仕上げられたこのスーツは、サヴィア氏の言うところの「Hollywood Style」。往年のハリウッドの華やかな雰囲気、JAZZYなテイスト、また40年代のボールド・ルックのニュアンスも感じさせる、とても艶のあるスーツである。


ミケーレ・サヴォイアは、日本でも過去Esquireや初期の頃のPen等で紹介されたことのある、NYのテーラーである。特にそのベースは1930年代40年代に置き、かつて華やかに装うことが男らしいスタイルであると感じさせるかのような時代のスタイルを再現することで有名であった。JET SET氏は1999年にニューヨーク 125EAST 7TH STREETのサヴィア氏のお店で誂えた。NY滞在中に、電話で「私はトーマズ・オトマン(当時のニューリパブリック)を知っている日本人だ」と説明してアポイントメントをとられたとのこと。お会いしたサヴォイア氏はとても気さくな方で、祖父の代からテーラーをやっている家系だったそうである。

採寸に行ったときの店内にて。彼の採寸で特徴的だったのは、肩の傾斜を測るときに分度器のような器具を使用していたとのこと。首及び背中の姿勢を測定する機器などと合わせて採寸時に使用する器具のようである。誰でも使っている器具ではないらしいが、肩周りや首、背中といった曲線と立体にて構成された、いわばスーツの仕上がりの良し悪しの根幹をなす部分についての誤差を予め少なくするためのツールのようである。経験豊富なテーラーなどは通常テープメジャーによる計測、目測と推測で数値を出してパターンを起こすが、このツールを使うことで、そうした作業で起こりうる誤差やアイロンがけなどによる生地の伸縮によって生じる誤差等の仮縫い時における修正をできるだけ少なくすることができるというメリットがあるらしい。手作業による「感覚」で引き継がれる部分でもある技術を、できるだけ正確かつシステマチックに改良する、アメリカ的な合理性を垣間見る話である。

採寸も終わり、「仮縫いを楽しみにしてくれ、シニョール。」といった会話を交わしているところ。それにしても、サヴォイア氏のピタッとしたウエストコートとボリューム感のあるトラウザーズ感が最高に格好いい。ロングポイントカラーのシャツ、タイをカラーバーとタイスライダーであしらい、そしてウエストコートの(下ではなく)上のポケットにポケットウオッチのチェーンを覗かせているあたり、参考にしたい装いである。その後出来上がったスーツが日本に送られてきた際、サヴォイア氏の感謝の印としてシルクのニットとカシミヤのマフラーが手紙と共に入っていたとのこと。サヴォイア氏の心遣いが感じられる、素敵なエピソードである。




聞けば、現在はサヴォイア氏はこのお店を閉店されているとのことで、現在の消息はつかめていない。日本でも海外でも、いいものをつくっているのに、このような流れになってしまう状況はなんとかならないものだろうかと残念に思われてならない。




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