日比谷 三信ビル
解体前最後のクリスマス
(30th December 2005)








クリスマスの近づいた2005年の12月某日、解体されることを知った日比谷の三信ビルのことをふと思い出し、解体前に改めて見ておきたいと思い、仕事帰りに足を向けてみた。三信ビルが出来たのは当サイトのスタイルのテーマとも重なる昭和5年(1930年)。日本が戦争を始める前からある、数少ない歴史あるオフィス・ビルである。休日に銀座へ出掛けたときは、必ず用もないのにこのビルのアーケードをゆっくりブラブラするのが愉しみのひとつだった。温もりのある旧き時代の日本を感じさせる、数少ない貴重な建物。重厚であり、手のこんだ装飾が施されたつくりは、いつ訪れても「あぁ、いいなぁ。」と安心させられるものがあった。こうした美しい日本の近代建築を代表する建物がどんどんなくなっていくのは、誠に残念なことである。

このビルのアーケードを訪れた時は、夜の9時も過ぎた時間帯。流石に人影はまばらで寂しい雰囲気だったが、それは時間帯だけでなく、入っていたテナントが殆ど移転を完了していたからということに気付くのにそう時間はかからなかった。レストラン「ヌーベルバーグ」も、「ニューワールドカフェ」も、他の事務所も、いつもぶらぶらと横目に見ていた店が殆ど移転していた。テナントが退去して貼紙が貼られたガラスを歩きながら見るたびに、一層寂しい気持ちがこみ上げてきた。


入口が扇形に配されたエレベーター・ホール。
こんなオフィスビルで、このようなエレベーターに毎日乗って
仕事場へ行けた方が羨ましく思える。


映画にでも出てきそうな雰囲気の階段。


2階からの眺め。
各支柱からアーチ型に登っていく天井の造作が織り成す芸術的な風景。


まさに前時代の良き頃の装飾芸術を感じさせる、柱部分の彫刻模様。


2階の廊下。まるでソフト帽を被りながら、
いそいそと探偵らしき紳士が今にもドアを開いて出てきそうな雰囲気。




2008年2月現在、三信ビルは既に取り壊され、姿を消した。日本の歴史的な素晴らしい建物がまたひとつ失われてしまった。保存を呼びかけていた以下のサイトでは様々な三信ビルの写真画像を見ることができるで、是非ご覧いただきたい。



有楽町日比谷地区のまちづくり提案
 三信ビル保存プロジェクト
 http://www.citta-materia.org/sanshin.php?catid=25&blogid=2





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