Classic Weekend in HAKONE ◆
(30th September 2006)













今年2006年の7月初旬の週末、箱根へ小旅行に赴いた。宿泊は以前から一度泊まってみたいと憧れていた日本のクラシック・ホテルとして有名な箱根富士屋ホテル。今回はそのときの見聞記を掲載したい。



◆Chapter 1.
第1日目
 
箱根辺りの小旅行だと車で行くのが気軽で良いが、今回はあえて電車で行こうという企画にした。小田急線のロマンスカーは、箱根や小田原へ行く際の足として、人気があり定番の列車。今回は新宿駅からこれに乗って箱根湯本へ。さしづめ「日経おとなのOFF」や「サライ」あたりが好んで特集しそうな、旅行然とした旅の始まりである。
今回乗るロマンスカーは、以前から一度乗りたいと思っていた新車両VSE5000.
ソフィスティケートされた、近未来的デザインのこの車両は、
ロマンスカーの中で今最も旬な車両。





ロマンスカーに乗って約1時間半程で箱根湯本駅に到着。タクシーにて宮の下にある富士屋ホテルへ。この富士屋ホテル、創業は明治11年。日本のクラシック・ホテルの草分け的存在でもあるこのホテルは、その建築物の絢爛さや料理、温泉、ホスピタリティと全てにわたって泊まる人々を魅了させるホテルである。数々の国内外のVIP、そして文化人に愛されたこのホテルは、今日も昔と変わらぬであろう佇まいで我々を迎えてくれた。
到着すると、その車の多さに、改めて驚かされる。表でせわしなく車の手配や宿泊客の荷物対応に動き回るポーターやコンシェルジュ。恐らく昔から変わらぬであろうこの盛況ぶりは、まるで映画「グランド・ホテル」の日本版といった風情である。

チェック・インカウンターのあるロビー。
深みのある色合いの重厚な木材で設えられた階段や柱に、このホテルの歴史と伝統を感じさせられる。


富士屋ホテルの宿泊棟は、敷地内に本館、花御殿、西洋館、フォレストロッジとあるが、特に本館、花御殿と西洋館は、このホテルの象徴的な建物といっていい。
花御殿。昭和11年(1936)建造。大きな千鳥破風の屋根、校倉造りを模した壁が特徴のこの建物は、国の登録有形文化財となっている。名前にもあるとおり43室全ての部屋には花の名前が付けられており、客室のドア、鍵など、細部に花のモチーフが使用されている。海外では「フラワーパレス」と称され、富士屋ホテルの象徴的な建物となっている。ハワイにあるロイヤル・ハワイアン・ホテルのメイン客室棟は別名「ピンク・パレス」と呼ばれているが、さしづめこれはその日本版といったところであろうか。

こちらは西洋館。明治39年(1906)建築。鎧戸付き上げ下げ窓の外観を持つ、典型的な明治の洋館である。こちらも国の登録有形文化財となっている。1号館「カムフィ・ロッジ」、2号館「レストフル・コテージ」の2棟からなる木造2階建てで、建てられた明治時代当時の風情をよく残した洋館である。白い外観は、これもなぜかハワイの「シェラトン・モアナ・サーフライダー」の本館「バニヤン・ウイング」を連想させられる存在。やはり歴史ある建物は洋の東西問わず素晴らしい。

今回はギリギリの申込だったため、スタンダードルームは全て満室。唯一空いていたという、西洋館のスーペリアツインルームをリザーブした。その西洋館内、宿泊部屋のある2階へあがる階段。この西洋館、ロビーエリアから一歩足を踏み入れると、急に空気がやや冷えた感じがし、旧い建物ならではの独特な匂いと相まって、一気に時空を越えたかのような感覚を覚える。重厚な木製の階段は一段一段上がるたびにギィッ、ギィッと重く渋い音を立て、いやがおうにも期待を膨らませる。

今回リザーブした西洋館のスーペリア・ツインルーム。約40平米はあろうかと思われる広い室内、高い天井と、外からは想像がつかないほど開放的に光を取り入れる高い窓。この贅沢な空間を僅かな間だけでも独占できるのは非常に貴重かつ贅沢な体験といえる。



1日目のメインイベントは、このホテルのもうひとつの有名な施設であるレストラン、「メインダイニングルーム ザ・フジヤ」でのフレンチ・ディナー。このダイニングルーム棟、建築は昭和5年(1930年)。日光東照宮本殿をモデルに造られたというこのレストラン、高山植物や花鳥が描かれた見事な格天井と彫刻、そして大きな窓から見える箱根の山々と木々の景色の織り成すハーモニーは訪れる人を圧倒させる。この建物も国の登録有形文化財に指定されている。
夕食はやや早めに夕方6時から予約。箱根の山の夕暮れ時の涼しさと虫の音、心地よい風とたなびく木々の葉の音を聞きながら、宵になるまでのひとときを美味しいフレンチを食しながら過ごす。最高に贅沢なひととき。

コース料理をひととおり終わると、辺りはすっかり漆黒の闇。レストランも8時からの予約客が入り始める頃となっていた。すっかり居心地が良くて長居をしてしまったようだ。


Chapter.2
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